君を選んだから
「あぁ、もう、どっかに向かって叫びたい。細か過ぎて発狂しそう。」

「しょうがないでしょ。うちの商品も入ってる棚なんだから、文句言わない。」


メイク用品の棚を作りながら、ビューラーの替えゴムを片手に須賀くんがつぶやく。

女子の私でも面倒な棚だけに、気持ちはよくわかるんだけど。


「ズルいよな、主任。さっさと楽な衣洗の棚かなんか取っちゃって。」

「違うよ。そういうところに頭が働くのは、主任じゃなくて、ペア組んでる守谷さん。」

「あ、なるほど。守谷さん、いっつも要領いいからな。」

「だよね。結構、キツい毒吐くのに、何故かみんなに愛される世渡り上手、みたいな。」

「そうそう。人見知りのくせして、何故か周りの方から勝手に寄って来てくれるっていう。」

「トクな体質だよね。」

「ホント、マジで羨ましい。」


自社製品を市場に流通させるためのいわゆる販社であるうちの会社には、基本的に人当たりの良い人が多い気がする。

それが特にうちのチームには色濃く反映されていて、主任を始め、みんながみんな、癒しを感じさせる独特のユルさみたいなものを持っている。


羨ましいとか言ってる貴方にも、守谷さんとはまた違う種類の放っておけないオーラが出てるから大丈夫だよ、須賀くん。

自分ではわかってないのかもしれないけど、それがちゃんと営業成績にも出てるから。

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