エリートな彼と極上オフィス
「あなたは入社してから、IMCしか知らないのだね」
「お恥ずかしいです」
そうなのだ。
私はあまりに特殊な部署に最初から入ってしまったため、会社の成り立ちや部署間の関係性を、肌で感じるということを知らない。
他の部門にいれば否応なしに体感するはずの、風土や仁義的な制約が、わからない。
IMCという特権的立場にいるためだ。
最近それが、仕事をする上でのハンディキャップとして、じわじわとのしかかってきている。
「私が読み解くに、岩瀬CMOのやり方が社内にいい影響を及ぼすにつれ、社長は欲が出たのだと思う」
「先日の人事の時、CMOから社長に直々に考えを訊いていただいたのですが、IMCはそのまま邁進すべし、という内容だったらしく」
「そのとおりだと思うよ、だが社長は、その後のことを考え、次なる手を打ちはじめたんだ」
「理解者がいなくなったことで、IMCは、厳しい局面にあります」
「いなくなったのかな、本当に?」
問われて、考えた。
確かに、動いただけで、いなくなったわけではない。
「社長は、理解者を増やしたいのだと思う、それも、迅速に」
「ではあらかじめ、IMCとそう握っておくべきです。少なくとも岩瀬CMOとは」
「そこはそれ、彼らも親友でありライバルだからね、信頼が、甘えと虚栄心となって現れた結果じゃないかな」
そういえば、社長とCMOは若い時代を同じ部署で戦った先輩後輩だ。
岩瀬CMOなら理解して、対応してくれるだろうと、社長が性急な手を打ったってこと?
それが本当なら…
そこまで考えて、視線に気づいた。
榎並部長が頬杖をついて、茶目っ気のある目で私をじっと見ている。
「そろそろ自分に足りないものが見えてくる時期だろう」
「…はあ」
「こういう大企業で物を言うのは、結局人事だ。山ほどいる従業員全員を、いかに不満を最小限に、効果を最大にすべく配置するか」
「ですね」
「企画、営業、どこへなりと行かせてあげるよ、私なら」