エリートな彼と極上オフィス
『まさかと思うけど、金曜の話?』
腰に手を当てて、千明さんがうんざりと言う。
半々くらいの頻度で眼鏡をかけてくるんだけど、今日はその眼鏡の日だ。
そうすると、性格を知らなかったら近づきがたい、知的な雰囲気がある。
『いや、あ、そういや金曜は、千明にも迷惑かけたよな…』
『つけるつけないって、なんの話? まさかゴム?』
すいすいと机の間を縫ってきた千明さんが、とんでもなくダイレクトな発言をしたので、私も先輩も絶句した。
先輩に至っては、加害者意識も手伝ってか、再び真っ青になっている。
たぶん私も、相当青ざめている。
いや、真っ赤かもしれない。
『お前、湯田ちゃん襲ったの?』
『俺、その、覚えてねえんだけど』
先輩は、続きを言わせてもらえなかった。
近づいてきた勢いそのままに、千明さんに殴られたからだ。
『先輩!』
『お前、最低だな、知ってたけど』
『千明さん、違うんですって、別に一方的にってわけでもなくて』
『あのね、そういうの関係ないから。こいつが反省しなきゃなんないのは、相手が湯田ちゃんだってとこ』
床に倒れ込んだ先輩の顔が、痛そうに歪んだ。
わかってる、先輩はわかってますよ、それぐらい。
よりによって、自分を好きって言っている後輩を相手にしちゃって、だから吐くほどの罪悪感だったんですよ。
コウ先輩は、ちゃんとわかってる。
『どうせお前、罪の意識でしばらく湯田ちゃんの顔も見られないだろ、その間、俺が預かっとくよ』
『…え?』
私と先輩の疑問の声が重なる。
私は千明さんにぐいと肩を抱き寄せられ、困惑しながら先輩を見た。
口の中を切ったらしい先輩は、唇を赤く濡らして、私と同じく困惑に眉をひそめている。
『お前、自分にばかりアドバンテージがあると思うなよ、休んでた間に業務分担も変わってる、湯田ちゃんとの接点はないと思え』
『待てよ、千明』
『行こ、広報フロアに仕事の拠点作ろうと思うんだ』