エリートな彼と極上オフィス
「なんでああなんだろね、あいつ。根は真面目なのに、どうも節操の分野になるとちゃらんぽらんなんだよな」
「いっそ根もちゃらんぽらんならあそこまでの苦悩もなかっただろうにと思うと、気の毒で…」
「自業自得」
ばっさりだ。
千明さんは誰の味方をするでもなく、不思議なまでに公平なので、彼に斬られると抗いようがない。
コウ先輩も、お前が悪い、と突きつけられ続けて、なんだかもう可哀想になってきた。
見るからに相当思い詰めていて、月のあれが来ないんです、とか言ってみたらその場で結婚してくれそうな勢いだ。
「来ないの?」
「来ましたよ」
「それ、あと1ヶ月くらい言わないどいてやってよ、面白いから」
頼まれなくたって言わないですよ、こんなこと…。
いや、先輩のことを思えば、言ってあげたほうがいいんだろうけど。
ていうか私、千明さんに話しすぎだ。
昼間っから職場でする話じゃないのに、どうもこの人といると、ずるずるとペースを持っていかれる。
「スタイルブックのことは、プレゼンに盛り込んでもいいですよね」
「もちろん、積極的に言おう。あれ湯田ちゃんのアイデアなんでしょ、すごくいいよね」
「いえ、先輩と聞きに行った、他社の事例で…」
言いかけた言葉が消えてしまった。
千明さんの背後、広報部の入口をくぐってこちらに来る、すらりとバランスのとれた姿を見つけたからだ。
「千明、これ岩瀬さんの原稿、清書前で悪いけど」
「おっ、サンキュー。じゃあこっちで清書して、また戻すよ」
「助かるわ」
私たちの前に、赤字で修正の入った書類をばさりと置くと、ちらっと私を見る。
「山本、これさあ、確定稿は顔合わせて作るほうがいいと思うんだけど、できる?」
「俺もそれがベストだと思う、調整する」
「湯田ちゃん、清書どのくらいかかるかな」
「そうですね、この量なら、午前中には」
CMOの綺麗な字を確認しながら見当をつけた。
ついでにプレゼン資料と合体させた台本の形にまで持っていけるだろう。
じゃあ14時頃、と見上げた千明さんに、あ、と先輩が言葉を濁した。