エリートな彼と極上オフィス
「わり、午後は休みもらうんだ、明日朝イチでどう?」
「いいよ、どうかしたのか」
「いや、ちょっと…家のこと」
言いにくそうにするのが、胸を打つ。
千明さんは、そっか、と微笑んで、先輩の腿のあたりをげんこつで叩いた。
「気をつけてな」
「おう」
私を少し気にするように振り返り、でも目を合わすところまでいかないまま、先輩は行ってしまった。
あれ以来、ずっとこんな感じで、全然話もできていない。
私が最初、話すのを拒んだんだから、仕方ないと言えば仕方ないんだけど…。
「あれっ、ごめん、ないなーと思ってた」
「私もびっくりしましたー。昼間、風強かったから、こっちまで飛んできたんですね。あとこれ、地元のお土産」
「わ、ありがと!」
度肝を抜かれるほどセクシーな下着と和菓子を受け取って、由美さんは私を中に招いた。
「上がってかない? うちも実家から、食べきれないほど果物が届いてんの」
「うわっ、ほんとですか、じゃあ…」
その時、振動音がポケットからした。
登録していない番号からの着信だ。
仕事関係だろうと、由美さんに断って出ると、向こうはためらうように、しばし沈黙して。
『…俺』
遠慮がちに名乗った。
「だーれだ、ってこれ、一度やってみたかったんですよねえ、えへへ」
「昭和か」
すごすごと手を下ろしても、先輩は振り向かなかった。
駅前の公園に『いるから』とだけ伝えてきた先輩は、スーツにコートを羽織った姿で、青白い灯りの下、ぽつんとベンチに腰かけていた。