エリートな彼と極上オフィス
「俺、俺は単に、もっと自分を大事にしろって」
「差別とか圧迫だとか、騒ぐのはたいてい外野なんですよね、本人そっちのけで勝手に代弁して、正義を行っている気になって」
「なんだと?」
「なのに痴漢にあっても大声あげなかったら、嫌じゃなかったんでしょと言われるわけですよ」
「お前こそなんの話だよ、俺は、お前が犠牲になることなんてないって」
「常に当事者が無視されるって話です。武器を使って何が悪いですか、先輩だってそのかっこよさ、散々武器にしてきたでしょ!」
「かっ…?」
先輩は今度こそ目を丸くして、顔を赤らめる。
してねえよ、と言いたいのはわかるが、それを言ったら、自分がかっこいいと認めることになるので、何も言えないだろう。
ああ、口をぱくぱくさせていても、先輩はかっこいいなあ。
「なんで女だけ、それを武器にするのは卑しいとされるんですか、それこそ差別だと思いませんか」
「卑しいなんて言ってない、お前が傷つくって」
「それが余計なお世話だと」
「はい、そこまで!」
間に入って、パンと手を叩いたのは、千明さんだった。
ちょうどよくそこで、昼休憩を告げるチャイムが鳴る。
「ほら、続きは食いながらやってこい、何やってんだお前ら、仕事中に」
これまでは、こういう時コウ先輩は、議論を中断することはなく、徹底的に私と話してくれた。
でも今日、彼は、気まずそうに私と千明さんを交互に見ただけで、ひとりで部屋を出ていってしまった。
取り残された私は、居場所のないままうつむき。
千明さんはため息をついて、私の肩を叩いた。
「どしたの、最近?」
どうもしてません。
3週間前、私が先輩に、好きですと口走って。
先輩は、ごめんと頭を下げた。
それだけです。