エリートな彼と極上オフィス
『たとえばさ、人がこのブランドいいなって思うのって、商品が好みとかだけじゃなくて、CMとか、サービスとか、サポートとか』
『ふむふむ』
『環境活動とか、株主への利益配分とか、そういういろんな要素が絡むだろ、本来それらは統合的に管理されてなきゃならない』
『されてないんですか』
入社したばかりの頃、私はコウ先輩に、そんな質問をした。
先輩は、あの爽やかな顔を、ちょっと曇らせて笑った。
『当然そう思うよな。されてない。実際は各部門が別々に動いているだけで、包括して見ている部署はないって企業がほとんどだ』
『なんで作らないんですか』
『縦割り社会がそれを許さないからさ。でもうちは作ったんだよ、それがここ、統合マーケティング室だ。IMCって知ってる?』
『今のお話からすると、インテグレーテッド・マーケティング…Cってなんですか』
なけなしの英語力を駆使して推理した私に、先輩はぱっと明るい表情を見せ、遠慮なしに背中を叩いてきた。
こんな嬉しそうに驚く人、初めて見たなあと思ったのを覚えている。
『勘がいいな! Cはコミュニケーションだ。対話して初めて、マーケティングは意味を持つ』
『新しい部署なんですか』
『この4月にできたばかりだ。メンバーはいろんな部署から来てる、広報、宣伝、戦略、商品企画』
『コウさんは?』
『俺は営業』
『そんな感じしますね』
そう? とにこっとする。
思えばすでにこのあたりから、私はこの人に、心を持っていかれつつあったのかもしれない。
IMC室は、当時の広報室の機能を吸収する形で設立された。
社内外との広いパイプのある部署を基盤とするのが、最も効率がよかったからだ。
『広報部』は組織を縮小して存続しており、IMC室とは非常に密接な関係にある。