エリートな彼と極上オフィス
「こういう食えない子って大好き」
「食えないついでに当ててあげようか、由美さん正式には、まだバツついてないだろ」
一瞬、由美の顔から笑いが消えた。
けどすぐにその瞳には、愉快そうな色が宿り、どうしてそう思う? と首をかしげて覗き込んでくる。
広秋より10歳ほど上で、その年齢をうまく味方につけて、ある程度長い間、人生を自力で歩いてきた者にしか出せない色気と迫力を持つ女。
「なんとなくね。清算が済んだ感じには、見えないんだよなあ」
「誰にも言ってないわ、世間的にはバツイチで通してるの」
「山本みたいのは素直に信じるだろうけどな、これだけいろいろ話してりゃ、勘づくよ、少なくとも俺はね」
「ほんと食えない子」
楽しげな笑い声をあげて、由美は広秋の首に抱きつくと、親愛の情のこもった含みのないキスを唇にぶつけてきた。
先ほどと同じように、それも特に振り払うことはせず、広秋は好きにさせておいた。
「まさか協議中じゃないよな?」
「そんな時に男の子連れ込むほどバカじゃないわよ、単なる冷却期間。お互い距離置きましょって、離れてるの」
「元サヤの可能性も考えてる?」
「どうかな」
目を伏せて、陰りのある微笑みを見せる。
元に戻る意思がないのなら、さっさと別れてしまえばいいのに、と広秋などは思うものの、結婚や離婚というのは、そう簡単な話ではないんだろう。
たぶん。
ふと気が向いた。
決してそんなつもりで来たのではなかったし、由美が今、慎重に自分たちの距離をコントロールしているのもわかっている。
けど、そういう何もかもを、気にしないことにしよう、と、急にそんな気分になった。
テレビを見ながら酒を飲む由美の、唇がグラスから離れた瞬間を狙って肩に手をかける。
振り向いたところに口づけた。
由美は心底びっくりしたようで、大きな目をますます大きく見開く。
もう一度しようと顔を寄せると、じいっと広秋の目を見つめて、由美がにやりと笑った。
「人妻と寝たことある?」
「あるわけないだろ」
「そっかあ」