エリートな彼と極上オフィス
土曜の早朝、夜遊びのけだるさを残す電車内に、スーツ姿のふたりは浮いている。

航はぽかんとしながら口を開いた。



「えっ、千明、何、由美さんのとこ泊まったの?」

「お前に関係ないだろ」

「俺、湯田の勘違いだと思ってたんだけど、実際そうなの?」



関係ないって言ってんだろ!

無邪気な興味を示してくる航を締め上げてやりたくなりながら、やはり肝心のところで勘のいいこの男に、内心で感心する。

由美と広秋がそういう関係でないことに、航は気づいていたのだ。


まあそれもゆうべまでの話だ。



「お前、せっかく湯田ちゃんといるならもっとゆっくりしてくりゃいいだろ、なんでこんな早く」

「いや、着替え持ってないから、一度帰ってちょっと寝て、午後にまた一緒に遊びに出ようかと思って」



あっそ。

いい男だな。


男ふたりで並んで座るのもバカバカしく、扉の前に立ったまま電車に揺られる。

そういえばさあと航が腕を組んだ。



「会社案内ビデオ、見たんだけどさ、あれどこが作ってんだろ? 制作会社変えたほうがいいぜ絶対、あれじゃ教育番組だよ」

「あ、見たんだ、ちゃんと」

「当たり前だろ」



どういう意味だよ、と眉をひそめる。

てっきり途中で飽きてなだれ込んだのかと思った、と率直に言うと、航の顔がじわじわと赤くなり、怒った口調になった。



「最後まで見たよ、ていうか、なだれ込んだって、なんで」

「想像つくだろ、普通」



丸聞こえだったというのは伏せておくことにした。

いずれまた楽しむ機会があるかもしれないし、あの時由美の部屋に広秋がいたという事実が、そんなふうに湯田に伝わるのが、なんとなく嫌だったのだ。


そういうもん? と納得しているようなしていないような様子の航を横目に、ドアに寄りかかる。

知らず、疲れた息が漏れた。

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