エリートな彼と極上オフィス
日曜日、珍しく晴れ間がのぞいたので、私は部屋を飛び出し、電車に数駅乗って買い物に出かけた。
ワイヤレスマウス、切手、ストッキング、とてんでんバラバラの買い物リストを鼻歌に乗せて、駅に隣接したショッピングビルに入る。
入り口すぐのドラッグストアで夏向けのストッキングをまとめ買いし、建物内にある家電売り場へエスカレーターで上り。
周辺機器コーナーを探してPC売り場を抜けようとした時、聞き慣れた声が耳に飛び込んできて、足が止まった。
「さあ、俺はキーの配置変わるの嫌で、同じメーカーにしちまうけど」
「でも薄くて可愛いんだもん、これ」
「じゃあそれにしろよ」
「航が、これはスペックがカスだって言うから!」
「スペックは気にしないってお前、言ってただろ」
カスまで言われて買いたくない、とすねる女性は、社内で見かけたことがある。
たぶんコウ先輩の同期。
ここに来る前にもどこかで買い物をしてきたんだろう、女の人は小さなショッパーを持っている。
先輩は私服もかっこいいなあ。
そんな現実逃避をしなければならなかった。
「えー、どうしよう、どれにすべき?」
「欲しいの買ったらいいよ、ネットくらいしかしないんだろ? だったらどれでも変わんないって」
「そういう言い方されると、買う気なくなる」
男の脳と女の脳はこう違う! をそっくり再現したような会話をしながら、彼らはぐずぐずとPC売り場を去らない。
私は遠回りして、奥の壁際の棚から目当てのマウスをさっと取り、会計を済ませて、もう一度さっきの場所へ戻った。
ふたりはまだそこにいた。
手ぶらのコウ先輩は、白いポロシャツに、ちょっと足首の見えるパンツという爽やかカジュアルな姿で、ポケットに両手を入れている。
「えー、決まんないじゃん、意地悪」
「なんで俺だよ、お前の買い物だろ」
「判断材料をちょうだいって言ってるの!」
「やったろ、スペックはカスだって! 今足りないのは、お前の判断基準だよ、何が満たされれば買うんだよ?」