エリートな彼と極上オフィス
外出した時にこっそり撮った写真を見せる。

横断歩道の手前で、こっちを振り向いている先輩だ。

晴れた日に、上着を肩に引っかけている姿が、爽やかでいかにも働き者ぽくて、我ながらよく撮れた。



「バレてるじゃない」

「カメラを向けた時点では盗撮だったんです」

「確かに整った顔だけど、他の写真ないの? 見知らない人の写真て、1枚じゃよくわかんないのよね」

「じゃあこれは」



飲み会の写真を見せる。

別に先輩を撮ろうとしたわけでなく、来られなかった人に見せるための全体写真だ。

端のほうでお皿から何かを食べている先輩が写り込んでいる。



「あー、わかったわ、うん、これはかっこいい」

「実物はもっとかっこいいですよ」

「何かしらね、かっこいい、って言いたくなる子ね」

「わかってもらえますか」



そうなんだ、そうなんだよ。

イケメンとか二枚目とか、優れた容姿の男性を形容する言葉は多々あれど、先輩にはシンプルに“かっこいい”が一番似合う。

なんでだろう、顔だけじゃない感が漂っているからだろうか。



「そこまで言う」

「先輩の魅力が言わせるのです」

「舞い上がってるわねえ」

「そりゃもう、初恋は富乃宝山の味ですわ」

「それ単に、今飲んでる焼酎だから」



笑う由美さんは、見透かしているのか、いないのか。

私は振る舞いほど、浮かれてはいなかった。

心の中は、お店の外同様、どんよりと雲が張っている。


私が先輩を好きなことは、今現在、先輩にとって何ひとつ、プラスになっていない。

何かしらの負担をかけているだけだ。


勝手に言ったのは私。

その責任が、ひたひたと押し寄せはじめていた。



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