エリートな彼と極上オフィス
「早いですね」
「早いですね、じゃねえよ」
翌朝、まだ誰も来ていないオフィスに先輩の姿があった。
私は毎日一番早くに出社するけれど、先輩はいつも、その30分後くらいに来る。
何かトラブルでも起きたのかと声をかけたら、デスクのひとつに頬杖をついていた先輩が見るからに不機嫌ににらんできた。
ちょっとここ座れ、と隣のデスクを指される。
「昨日の返事をもらってない」
腰を下ろすなり、単刀直入に来た。
頭の片隅にはあったものの、あえてその件を見ないふりして朝を過ごした私は、ぎくっと萎縮する。
「あの、答えに迷って」
「じゃあそう言えよ、俺、待ってたんだからな」
申し訳ありません、と言いはしたものの、まったく許してもらえていないのが伝わってきた。
そりゃそうだ、私が悪い。
「つまり俺のせいってことだな」
「ええと、まあ…そうなります」
「俺の何が原因なんだ?」
「えー、そう言われましても、そんな単純な話ではないからこそ答えようがなかったわけで」
バッグを胸に抱いて言い訳すると、先輩が、バンとデスクを叩く。
「お前はそうやって、自己完結してりゃ楽かもしれないけどな、こっちの身にもなれよ」
耳を疑った。
「楽ですって?」
「俺が原因でお前が悩んでるなら、どうしよう、何すればいいだろうって、散々考えたんだぜ」
「別に先輩に何かしていただかなくてもいいです」
楽、と言われたのが、驚くほどショックだった。
そのせいで気が立って、つい噛みつくような調子になる。