エリートな彼と極上オフィス

先輩は9月生まれらしい。



「もしや乙女ですか、私と同じですね」

「いや天秤座だけど、お前も9月なの?」

「私は11月生まれです」



しばらく考えて、先輩は静かに首を振る。



「たまにお前がめんどくさい」

「山本、そろそろあっち行けよ、湯田ちゃんと打ち合わせたいんだよ」

「なんだよ」



のけ者にされて、コウ先輩はすねたように食堂の席を立つ。

千明さんは私の正面に移動し、数枚のプリントアウトを広げた。



「案内状はこれでいいよね、当日迷わないよう詳細のマップを足したいんだけど」

「あの乗り場、わかりづらいですもんね」



がさがさと名簿やらなんやらを見ながら、ああでもないこうでもないと細かく検討する。

私たちは、近々開催される、IMC室&広報部及びその他関係者の大懇親会の幹事なのだった。

会場は、なんとなんと、屋形船だ。



「ゲームの班分け、できた?」

「できましたとも。集めたプロフィールを元に、出身県で分けてみました」

「無駄に白熱しそうで面白いね、それ」

「でしょうー」



日々の仕事に追われながらの準備は、このひと月で2㎏痩せたほどハードだけど、こういうバカバカしいことにこそ心血は注ぐものだ。

会には日頃おつきあいのある代理店やコンサルティング会社の担当者と偉い人も招く。

通常だったら、私たちがもてなされる側だけど、今回はそうではない。

我々が誠心誠意、取引先に楽しんでもらうのだ。

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