エリートな彼と極上オフィス
「どういうつもりか訊いていいですか、こんな気を持たせるようなことして、でもあの『ごめん』は有効なんですよね?」
「えっ、え、気?」
「そりゃ嬉しいですよ、お土産なんて県境越えるたびに私のこと考えてくださってたんだなと感激ですよ」
「俺は、だって」
「疲れてるくせにわざわざこんなとこまで来て、私を見つけたらかっ飛んできてくれて、嬉しいに決まってます」
同期の飲み会を平然とすっぽかして、私と食べたい?
どれだけ嬉しいと思ってるんですか、バカなんですか。
とりあえず勢いを止めなきゃとでも思っているようで、「俺は」と繰り返すのを、うるさいです、と一蹴した。
叱られた子供みたいな顔で黙る。
「ご自分のしてることがわかってます? 生殺しですよ、勘違いしないよう私がどれだけ必死か、考えたことありますか」
「なあ…」
「大事にしてくださっているのもわかります、幸せだと思ってます、でも」
深く息を吸ってから吐き出した声は、想定と違って静かに震え。
泣いているみたいだと他人事のように思った。
「…忘れないでいただきたいんですよ、せめて、会社の外では」
私があなたの一挙手一投足に、舞い上がったり惚れ直したりする、要するにファンなんだってことを。
どうか意識の片隅に置いておいてほしい。
ねえ先輩、半年たちました。
好きですと私が口をすべらせてから。
やっぱりつらいんですよ。
止められないんですよ、期待してしまう自分を。
自分が先輩を囲む女子の群れの中の、どのへんにいるのかを、考えずにはいられないんですよ。
そもそもそんな立場にないと、本人からはっきり言われているというのに。
私だって、それでいいと答えたはずなのに。
それもこれも。
「先輩が…近すぎるのが、悪いんですよ」
わかりますか?
うつむいた視界に、先輩の足元が入る。
紺のスラックスと、茶の革靴。
服の似合う身体つきってものがあるのなら、先輩がそれだ。
いつだって感じよく、清潔でまとまりがいい。