甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「あ、ごめんなさい。誰か来てたんですね」
「ああ」
「……じゃあ、明日、また」
「わざわざ、ありがとな」
「いいえ」と笑顔を返したけど、扉が閉まってからいたたまれなくなってダッシュで帰った。

もしかしたらあの靴は華さんと思ったけど、華さんだったら私に教えてくれそうだから違うのだろう。
彼女がいないとしても、そういう関係の人が課長に別にいてもおかしくはない。
じゃない。そうじゃない。
本当は、あのパンプスに見覚えがあった。若槻がこの前買ったと言って私が可愛いと誉めたものと同じだった。

「ああ、もう、バカ。なんで課長と若槻のこと気にしてるんだ」

ベッドの上でジタバタして、もう嫌になってしまう。さっさと寝てしまおうと寝返りを打つと課長からメッセージが届いたので、飛び起きた。
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