甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

だけど抱き合ってたという話が頭をかすめ、素直に入ってこない。

「芋煮のとき……その抱き合ってたとか、そんな話も聞いたんだけど、本当なの?」
「ああ、あれですか。あれは……ちょっと落ち込むことがあって」
「……」
「落ち込んだら抱きしめてもらうっておかしいって顔に出てますよ、小千谷さん」
若槻はからかうように言う。

「あ、ごめん」
「いいんです。おかしいですよね。きっと、おかしいんです。私も課長も」

落ち込んだら抱きしめられる関係って自分の中でなら、ただの友達ではない。だけど、そういう関係の友達もいるのかもしれない。
納得できなくて、自分にそう言い聞かせる。
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