甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「なんて、冗談です」
真に受けました? と笑う。
「本当は抱きしめてもらってなんかいません。私が一方的に泣きついちゃっただけですよ。ちょっと悲しいこと思い出しちゃって」
「そうなんだ。でも、その……家にも行くくらいなんでしょ?」
私がまだ関係を疑ってるのが伝わったようで
「本当に付き合ってるとかそういう関係じゃないですからね。家にも、この前初めてあげてもらえた位だし。それも話を聞いてもらってただけなんで」

なんだか信じられなかった。
だけど若槻が急に顕人くんと素直な感じで呼ぶと、疑いがほどけていく。

「……顕人くん、亡くなった姉の婚約者だったんですよ。もう何年前だろう。4、5年くらい前かな」
「……え?」
「婚約者……違うか、元婚約者か。うちの姉、けっこう自由奔放で、顕人くんのこと振り回して結局、婚約破棄して別れちゃったんですよね。
だから、なんというか私にとってお兄ちゃんみたいな感じだったんですよ。お姉ちゃんと付き合い長かったし」
「……そうなんだ」
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