甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「ふうん。あんまりスポーツとかしない人なんですか?」とベンチに腰をかけるので、私も隣に座る。
「うーん。学生時代は剣道部だったみたいだけど、今は、してないし。あ、でもゴルフには行くみたい」
「みたいってことは真唯子さんは行かないんだ。じゃあ、矢嶋さんは、真唯子さんの好きな事に付き合ったりしないんですか?」
「私の好きな事? そうだねー。あ、お酒に付き合ってくれるよ」
と得意げに答えると、ははは、言われなくてもわかってますと綾仁くんは笑った。

「そりゃ、あれだけ通えば、わかるか」
と、反省する。とりあえず、このタイミングで綾仁くんに返事をしようと思ったのだけど
「そういうことじゃなくて、なんていうか真唯子さんが笑顔になる為に何かしてくれるのかって事ですよ」
そう言われて、昨日の顕の言葉を思い返す。
私の大事にしていることを大事にしてほしいと言われた。
それは私を思っての言葉だったのだろうけど、笑顔になんてなれなかった。
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