クールな同期が私だけに見せる顔

「お前、ほんと、わかってないな」

「えっと、わかってないって?」

「普段は、酔ってる女なんか相手にしないんだけど、つい、勢いで押されて……」

「ついに勢いで?」

「ん、まあ、そういうことだ。
後悔はしてないから。どうなってもな。
俺は、間違ったことはしてない。
だから、何かあったら言ってくれ」

彼は、そう言って豪快に笑うと、私の後頭部を引き寄せた。

反射的に逃げようと思ったんだけど、抵抗しても無駄だった。

こいつは、思い通りにしようと思ったら、その通りにする。

省吾は頭をガッチリ捕まえたまま、唇を重ねてきた。

優しく、軽く触れ合ってから、しっかり唇を押し付けて来る。

コンタクトをしてなかったから、省吾の顔が近くてもぼんやりとしか見えない。


「今更だけど。君が何も覚えてないのは悔しいから」

彼はそう言って、もう一度、長いキスをした。

悔しいけど、ぼんやりとした視界の中でも省吾はいい男だった。

いい男だけど。

性格まで、いい男だとは言えない。
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