クールな同期が私だけに見せる顔


「そっか。休みって、あれだろう?」

省吾に気を取られて、課長の話を聞いてなかった。

「あれって、課長、何でしょう?」

何の話だか見当もつかない。

「七夕」

「七夕ですか?」

七夕って、課長、一カ月も前ですが……

「ん?何でって、来週から仙台は七夕祭りだろう、なあ沢井?」

いつの間にか、省吾が席に戻っていた。

彼は、私たちのすぐ横にいた。

上着を脱いで、椅子に掛けたところだった。

課長は、にこにこしながら私に向かって言った。

「これから、休み取って行くんだろう?いいな楽しんでおいで。中谷も喜ぶよ」

「あの、課長?」

課長は、私に話題を振っておきながら、私に背を向けていた。

課長は、すでに頭を切り替え省吾の方を見ている。

「おお。向こうさんは、どうだった省吾?」

課長は、私のことなんか、すっかり忘れて、省吾が取り出した資料に目を向けている。

「じゃあな、彼氏とゆっくりしておいで」

私は、省吾に一言も言い訳もできぬまま、課長にバイバイと手を振られて、フロアから追い出された。

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