クールな同期が私だけに見せる顔

取りあえず、腕から逃れよう。

彼の胸に手を当ててもがいてみる。

びくともしない。


「逃げようとしたって無駄だ」

罰だというように、余計に腕に力が入って締め上げられる。

ぐえっ。

彼の腕に圧迫されて本当に窒息しそう。


「胸が苦しい」

むせるように咳をしたら、締め上げていた腕が少し緩んだ。


やっと解放されたと思った。

めまいがして、ぐらっと体が揺れる。

自分の足で立ってみると、足元がふらつく。


「ちゃんと立てないのか?」

引き寄せられて、あっという間に固い胸の中に引き戻された。

もう、ダメ。じたばたしても、身動きできない。


「どういうつもりなの?」

私は、後ろにいる男に向かって言った。


「お前こそ、こんなところで、何してる」耳元で声がした。



強盗犯に人質になったみたいに、私は、誰かに後ろから羽交い絞めにされる。

私は、俊介さんから完全に引き離されていた。

「離して」

くっ付いてるのは、上半身だけだ。

だから、腕から逃がれられるんじゃないかと思って、手足を動かすけど、ダメ。
びくともしない。

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