クールな同期が私だけに見せる顔

あの後、省吾からは何の連絡もなかった。

日曜日は何もする気が起きず、何もしないまま夕方になってしまっていた。

何でもない時に、急に省吾の幻影に襲われる。

洗濯ものを干してた時、突然、後ろからぎゅっと抱きしめられる感覚に襲われて。ハッとした。

そして、二の腕をつかまれて、耳元で、彼の声がささやかれる感覚がよみがえる。

それだけで済めばいいんだけど。

その後、強烈に彼に会いたくなる。

私にできる事は、嵐のような感覚が収まるまでじっと待つことだけ。

省吾の感覚は、夜寝るまで私にまとわりついた。

朝、目覚めた時も省吾の腕がまとわりついている気がしてならなかった。

まったく、もう。
どうして振り払ったらいいのよ。



週明け、庶務課に勤務する私は、省吾とうっかり会社で鉢合わせしないように、彼が出社する時間よりも、早めに家を出た。

朝は、彼の姿を見ずに済んだ。

お昼になって、お弁当を持って、すぐに会議室に逃げ込めば、彼とすれ違うことはないだろう。

もう、10分もすればお昼だという時に
電話がかかって来た。


「鈴木さん、電話。営業から」

もう少しだという、気のゆるみから何も考えずに電話に出た。

「もしもし」

「お前さあ、今日時間あるか?」
省吾の声だ。

「ありません。失礼します」

時間あるか、と言われただけだし。
彼の質問には答えなくても大丈夫だろう。

彼とは仕事の接点はないし、庶務課に用事なら電話を掛け直せば、省吾の用事を聞いてくれる女の子なら他にもいる。

「おい、待て。まだ何も言ってないだろう?」

< 24 / 220 >

この作品をシェア

pagetop