フラワーガーデン【アリシア編】

「い、いやっ……!」

「アリシア、歌を歌って下さい」

「え?!」

「僕は傷心中ですから」

「エド……」

「それでも、あなたを愛している。そんな憐れな男のせめてもの心の慰みに子守唄でも歌って下さい」


エドは仰向けになったまま行儀悪く靴をポンポンと脱ぎ捨てると、ネクタイを緩めて「疲れたぁ……。あなたも今日一日愛想笑いで疲れたでしょう」と呟き、目を瞑る。


「そうだ。グリーンスリーブスがいいなぁ……」

「ダメ。私、音痴だから」

「だったら、尚更聞きたいですね」


エドはくすっと笑う。


「僕は物心ついた時から家庭が無かった。両親の仲は完全に冷え切っててね。毎晩、両親の部屋からは言い争う声が聞こえた。
そんな時、いつも耳を塞いで、この歌を口ずさんでは救われていたんだ」


そんなことが……。

小さかったエドを思い、胸が痛む。


「アリシア、僕のことをもっと知って下さい。こんな話をするのもあなただけだ」




< 148 / 269 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop