フラワーガーデン【アリシア編】
「先生!人を殺してはダメ!!」

「十分、正当防衛の定義の範疇だよ」


男はニヤリと刃の下で笑う。


「よぉ。お綺麗なアンチャン、女みてぇな顔して人を殺した事、あるのかぁ?気丈にしているけどよぉ」


僕は更に刃先をぴったりと男の喉元に当てた。


「おいおい。冗談だよ。……なぁ、取引しないか?あの女は上玉だ。
ヘイワーズに恩を売って金を貰うより、売り飛ばした方がよっぽど金になるってもんだ。
どうだ?取り分は半分で……何ならその前に味見したって……」


男の言葉に、殺意が過ぎり、ナイフを男の首に食い込ませた。


「先生!ダメ!」


アリシアは駆け寄ると、僕の腕にしがみ付いた。

気付くと男は既に気絶していた。


背後に人が逃げるように走り出す気配がし、ナイフを音のする方に投げた。

やがて、その翳は腕を庇うようにして呻き、その場に蹲った。


これで全員……か。


震えるアリシアの肩を抱き、その温もりを抱きしめた。


「アリシア。怪我は?」


アリシアは無言で首を振る。


「そうか、良かった。様になってたよ、護身術」


アリシアは震えたまま僕にしがみ付くと、子供のように泣きじゃくった。


「ひっく!あっ、あれ……しか、知らなかった……の。
講習会は、……1日だけ、しかも1時間、だけ、だったんだもの……」


それだけで、よくもまぁ、あれだけの啖呵が切れたもんだと、彼女の機転に敬服しつつも笑ってしまった。


夜明けの太陽が赤く空を染め始めた頃、彼女の髪が光を受けてキラキラと輝き、その頬を赤く染めていた。


< 193 / 269 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop