先生だって遊びたい
美鈴は一つ深呼吸をして話す事にした。



「大学時代の親友で井上香織(いのうえかおり)の恋人だった人で佐々木幹雄(ささきみきお)さん…私と香織はさっきのクラブ【INFINITY】に良く行っていたの…あの日もクラブの近くで待ち合わせしていたのでも私は行けなかった…あの日出かけようとした時、母が倒れて病院に運ばれたの…母に付き添っていた私は香織に何度も電話をしたんだけど繋がらなかった。あの日に限って香織は携帯電話を家に忘れていたの…香織は私をずっと待っていてくれた。そんな時若い男二人にしつこく言い寄られて逃げようとして道路に飛び出し事故に合ったの…そして香織は助からなかった……」

「美鈴ごめん、もう話さなくていい」

泣きながら話す美鈴を皇輝は「もういい、もういい」と言い抱きしめて居てくれた。
美鈴は話を止めることなく泣きながら最後まで話を続けた。

「事故を目撃した人の話を聞いた佐々木さんは香織の葬儀が終わると二人組の男を探し出して殴って病院送りにしてしまったの…佐々木さんはプロボクサーを目指していたから相手の怪我は酷くて傷害罪で逮捕された。刑務所を出て来てからも女の子達にしつこく言い寄ってる人見つけると手を出してるらしいの…だからあの辺で佐々木さんの名前出すと男達は逃げて行くわ…私があの日待ち合わせに行っていれば香織は死なずに済んだ…佐々木さんはプロボクサーとしての夢を捨てずに済んだ…私が2人の人生を奪ったの…私が……」

話し終わっても涙は止まらず美鈴が泣き止むまでずっと皇輝は抱きしめ背中を優しく摩ってくれていた。

「美鈴ごめん、ごめんな…辛い事を思い出させてごめん…」
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