君がいる毎日
am 9:00
鼻がくすぐったくて目が覚めた。

すぐ目の前に見慣れた茶色の頭があって、私の鼻をくすぐる柔らかい髪の持ち主がすやすや寝息をたてている。

カーテンの隙間から差し込む初夏の太陽がまぶしい。
まるで、もうとっくに起きる時間ですよ、って言われてるみたいだ。

二週間だけ大阪に行っていた唯月(ゆづき)が『水が合わなくて』こっちに戻ってきて四ヶ月。
hair BLISSの店休日である今日にあわせて、私も休みをもらっていた。

唯月は私の枕に頭を載せて、うつ伏せで寝ている。
片方の腕を枕の下に滑り込ませ、もう片方を私の腰に巻きつけて。
かろうじてスウェットパンツをはいてるけど、上半身は裸だ。

安心しきった寝顔。
無防備だなぁ、と思う。

二十三歳になったのに、なんだか子どもみたいで唯月の寝顔を見ていると心がほわっとする。
母性本能というのかもしれない。

背骨の一本一本をなぞるように、すべすべした背中にそっと触れてみた。


「ゆづー……」

小さな声でそっと呼んでみる。
唯月はピクリとも動かない。


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