君がいる毎日
規則正しい寝息と上下する背中。
唯月の体はとても温かくて、それだけで自分が守られてるなぁと感じられる。

今日は仕事が休みだし、いつまでもこうしていたい、という甘い誘惑に負けそうになるけれど、あいにく今日は予定がある。
そろそろ起きなくちゃ。

「ねぇ、ゆづ。起きよ?」

さっきよりも大きな声を出してみた。
唯月は微動だにしない。
頭をなでてみる。
やっぱり微動だにしない。

穏やかな寝顔を見ていると、ふいに唯月の唇に触れてみたくなった。
そっと腕をのばして唇をなぞると、くすぐったいのか、ふっと笑ったような気がして、すぐに指先を引っ込めた。
でもそれは錯覚だったようで、唯月はやっぱり規則正しい寝息を繰り返している。

もう一度、そっと指先で触れてみた。
唯月の唇は思ったよりもひんやりしている。
私の唇や頬や背中や肩にキスしてくるときはもっと温かく感じるのに。

寝ている唯月の冷たい唇にキスしてみたい、と思った。
起きてる時だったら、自分からなんて恥ずかしくて絶対にできないけど。

そっと唯月の唇に近づく。
慎重に、慎重に。
自分からキスするのは初めてで、うまくできるか分からなかったけど、私の唇はきちんと唯月の唇に触れることができた。
唯月の唇は、ふにふにしていてやっぱり少しひんやりしていた。

そっと唇を離して唯月の様子を伺ったけど、唯月はやっぱり寝ている。
私はもう一度、唯月のふにふにして冷たい唇にキスしてみて、やっぱり唯月が目を覚まさないことを確認すると、二回三回とキスを繰り返した。

ふにふに、ふにふに。

唯月が、どこでも私にキスをしようとするわけが分かった。
人前では恥ずかしいからやめてよ、って怒ってごめんね。
されるのも気持ちいいけど、自分からするキスはもっと甘美で癖になるね。

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