強引社長の不器用な溺愛
「まあまあ、そう言わず。……もし、結婚とかの予定があったら、俺にこっそり教えておいてよ。あ、セクハラじゃないから」


堂上さんの言う意味は、私が会社を抜けた時の、八束社長の補佐役不在の苦労だろう。

大卒入社より6年近く、総務の仕事と秘書の仕事を両立してきた。
確かに、私の不在はこの会社の存続に関わるかもしれない。


「私程度、代わりはたくさんいますよ」


ま、私ほどはなかなかいないかな。
ここまで完璧にデキル女。

自分で思いながら口では謙遜する。
はい、嫌な女です、私―。


「パーフェクト秘書が何言ってんだか。ともかく頼むよ」


堂上さんは私を褒めて、コーヒーを取りに行った。

私は、まんざらでもない気分で仕事に戻る。
さて、今月分の勤怠まとめちゃわなきゃ。


私、篠井絹はいわゆるデキル女だ。

あんな適当社長をうまく操縦し、この会社を回しているのは実質私だ。自負がある。

大学4年の時、従兄の敬三さんに「知り合いの会社を手伝ってほしい」と頼まれこの小さな会社に就職を決めたのも、私という人間が活きる場を探していたから。
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