強引社長の不器用な溺愛
周囲の社員たちから笑い声が漏れる。


「社長ー、真面目にやってくださいよー」


「篠井も忙しいんだから、困らせないでやって」


「つか、今日は外出から帰ってから、全然働いてないじゃないスかー」


あー、俺の会社、小姑が多過ぎる。
俺、のびのび育ってきたんですけどー。締め付けとか苦手なんですけどー。


「あんまりいじめると、俺もう帰っちゃうぞ」


デスクにいる社員たちに言うと、経理の土屋が言った。


「社長が帰っても、今日のところ問題なさそうですよ」


冷たい。なんなの、この子たち。
すると、デスクにコトンと俺のマグカップが置かれる。中にはインスタントコーヒーが湯気をたてているじゃないか。
篠井がふふんと偉そうな顔で笑っていた。


「サービスです」


「絹ちゃん……スキよ!」


「いつからオネエキャラに……キモ」


篠井は吐きすてるように言って、さっさとデスクに戻ってしまう。
表情が柔らかい。
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