強引社長の不器用な溺愛
俺は朝から外出して、午後に帰ってきて、「平和ー」とか言ってのんびりしてたからなぁ。
全然平和じゃねーじゃん。


「沙都子さん、悪い。ホント、すまん。今から作業できる?」


俺が両手を合わせて頼んでみると、沙都子さんの後ろから話を聞いていた篠井が顔を出す。


「もう17時になりますよ。沙都子さんは清子ちゃんのお迎えがあります」


沙都子さんが綺麗な顔を少し困惑に歪めた。
彼女は娘さんが小さく、頼るあての少ないシングルマザー。うちの会社も勤務時間の関係で契約社員扱いだが、能力的にはウェブデザインチームで一番仕事ができる。

今回に関してはデザインが主ではない。ネットワークシステムの問題だ。
俺が代わってやることができない。

やはり、人材の代わりがいない仕事を安易に請けるべきじゃなかったかな。
しかし、古くから世話になってる人の紹介だったしな……。


「私が清子ちゃんをお迎えに行きます」


篠井が名乗りを上げた。沙都子さんが困った顔で答える。


「悪いわ、絹さん」


「でも、緊急事態ですし。ほら、私、何度かお迎えに行ってるから、保育園側も知ってるでしょう?」


今日は沙都子さんに動いてもらうほかない。それなら……。


「沙都子さん、清子は俺と篠井で迎えに行く。会社か、俺のうちで面倒みとくから。頼む」


沙都子さんは、少し考えたものの他に手がない様子で、「お願いします」と頷いた。



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