強引社長の不器用な溺愛
俺は、篠井が何か言う前に、それを制した。

頭には『なんとかこの場を丸く収めたい』っつう、想いがあった。

しかし、目の前に篠井の親父さんがいる。
わざわざ、長野から仕事を投げ出して娘のために飛んできた親父さんに、生半可なことを言いたくない。

いや、はっきり言えば、俺の本当の気持ちを聞いてもらいたい。

結果として、俺は穏便にという気持ちを捨てた。いや、気付いたら言っていたのだ。


「お父さん、俺は絹さんに惚れてます」


親父さんの鬼瓦みたいな顔がぐりんとこちらを向く。
俺は立ち上がり、親父さんの剣幕に負けないように叫んだ。


「絹さんさえよければ、結婚したいと思っています!お父さん、絹さんをください!」


パーテーションの向こうでざっと椅子を引く音。
次に拍手と歓声が沸き上がった。
立ち上がったから見えるけど、社員たちが俺の告白に盛大な拍手を送っているという状況。

出たな、脳内お花畑社員ども!タイミングばっちりすぎるだろ!!

待て待て、俺は何を先走ってるんだ。
確かに本音だけれども、篠井には何の了承もとってない。

篠井は、俺が本気なのか誤魔化したいのか、まったく判別がつかないだろう。
つうか、篠井が好きだって気づいたなら、先に篠井に言うべきだろうが!
ええい、このうっかり屋さん・俺!

でもさ。
でも、言いたかったんだよ!

篠井の親父さんに認めてもらうには今しかないって思っちゃったんだよ!
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