強引社長の不器用な溺愛
「私は、この会社で働けて、毎日充実してるの。敬三さんから何も聞いてないの?そんな理由で連れ戻さないで!」


「そんな理由とはなんだ!」


父がさらに声を険しくする。
すると、社長が割って入るようにはっきりと言った。


「お父さん、申し訳ありませんがそれは俺が困ります。絹さんは実家に帰せません」


そりゃそうだよ。私がいなかったら、この人、仕事でパンクしちゃうもん。
しかし、続けられた言葉は予想外もの。


「婚約の話は嘘でしたが、俺が絹さんに惚れているのは本当です」


え?
今なんと?

私はすごい勢いで社長の顔を見た。
首がねじ切れるくらいのスピードで振り向くと、堂々と言い放つ社長の真顔。冗談ではなさそうだ。


「とはいえ、絹さんにはまだOKをもらっていません。俺はこれから、絹さんに振り向いてもらえるよう、誠心誠意努力するつもりです。絹さんに実家に帰られては、俺はアプローチの機会を逸してしまいます」


「あんたなぁ……いったい何を言ってるんだ」


さすがに父も引きつった顔で、目の前の青年を見ている。こんな途方もないことを言い出すとは思わなかったようだ。

私も思わなかったけどね!


「どうか、お父さん。絹さんに告白するお許しをください。愛を誓う時間を俺にください」


社長はまっすぐに父を見つめ、それから深々と頭を下げた。

なによ、これ。
お芝居だよね。きっと、私を会社に引き止めてくれるためのお芝居なんだよね。

それなのに、ものすごく嬉しくて胸がいっぱいの私がいる。
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