強引社長の不器用な溺愛
でも、安野産業から請け負っている立場の私たちだ。
痛手ではあるけれど、これ以上問題を大きくせず今回は引き下がっても問題ないのではなかろうか。


「うちは、まだいい。だけど、敬三さんの立場がまずい」


社長が苦虫を噛み潰したような表情で言う。
敬三さんがまずいっていうのはどういうことだろう。


「今回の件は厚労省のモデル事業なんだ。日本も医療費減のため、欧米諸国並みにサプリメント推進をして行こうっていう。補助金が出るから、動く金の桁が違う」


そうか、それほどの援助と利益がもたらされるから、副社長サイドは目の色を変えて奪いにきたのだ。
そして、それは安野産業にも大きな利潤を生みだす予定だったはず。


「敬三さんは、上に利益見込みまで出した上で、特販部っつうでかいプロジェクトチームを作ってやっていた。それをよそに持っていかれたとなったら」


社長の言葉は私が真っ青になるのに充分な威力があった。

敬三さんはキレ者の若き常務だ。
彼の足を掬おうと虎視眈々と狙っている敵は社内外に多くいるだろう。
今回の失策が、彼の失脚につながらないとは言えない。
いや、この件で鬼の首を取ったように騒ぎ立てる者も出るに違いない。


「社長……」


「とにかく、俺は敬三さんのところに行く」


「私も行きます!」


私は有無を言わさぬ強い口調で言った。




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