強引社長の不器用な溺愛
はあ、慣れているとはいえ、この男に振り回されるのも飽きてきた今日この頃。
次やったら、グーパンチだぜ。
いや、絶対またやるな、うん。何度グーパンチしても足りないな。拳がべこべこになるな。

やっぱり、結婚というイベントで、人生を仕切り直しちゃおうかな。
この男の老後を見ることが確定しないように。

妻として母として、これからは家族のために生きます。そして夫について海外へ……っていうのはどう?
手っ取り早く縁も切れていいじゃない。
いやいや、その前に海外赴任がまわってくる男を捕まえろっちゅう話。

心の中で妙な打算を繰り広げながら、最後の一文字を打ち終わる。


「社長、私、終わりました。確認してください」


「あー、わかった。俺のが終わったら見るわ」


「それじゃ、社長が終わるまで帰れないじゃないですか」


「今夜は帰さない」


「頭から真っ二つに割れろ」


もともと、社長とは年が二つしか離れていない。
八束デザインの現メンバーは23歳から45歳という若い会社で、私に同期はいない。
変な話だけど、社長と堂上さんが、一番年が近いのだ。

業務上、これほど面倒見ていると、自然とこういう態度にもなる。

この男が、私の悪態に乗っかりこそすれ、本気で怒る器の小さい社長じゃないのも知っている。


「まあ、もう少しだからおとなしく待ってろって」


その言葉に騙され、そこから1時間。
おーい、終電行っちゃいますけどー。
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