強引社長の不器用な溺愛
「社長っ!まだですか!?」


「できた、ジャストナウ!よっしゃ、じゃ篠井の作ってくれたのチェックするわ、待っとけ」


「だーかーらー」


突っ込みかけてやめた。
もういいや。

終電には間に合わないし、タクシー代はこの男に出させるし(断じて会社の経費にはさせまい)、明日は午前中DVD見て、午後はぐーぐー眠ればいいし。

早く終われー。
呪いながら、それでもコーヒーを淹れてあげる。
やっさしい、私。


「篠井さー、今日は男でも来る予定だったのかー?」


PC画面を眺め、淹れたてのコーヒーを飲みながら社長が声をかけてくる。
自分のやることが終わり、後はチェックとなった途端、セクハラまがいの雑談をしかけてくるあたり。


「そういうこと聞きますか?まあ、ご想像にお任せします」


含みを持たせて強がっても、事実は何も変わらない。
でも、『帰ってがっつりDVD見るつもりでした』とは言えないですよ。
それはこいつ相手に限ったことじゃない。私のキャラ的に、そういうのナシ。
バレたくない、ぼっちな週末なんて。


「一応、年上として忠告するけど、不倫はダメだからな。慰謝料とか結構取られるらしいぞ」


「はぁ?」


不倫なんかするかってーの。
というか、不倫なんてする機会があったら、好条件の彼氏を探しに行くっての。
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