強引社長の不器用な溺愛
頭を抱えて呻いていると、スマホの着信音。表示は九重沙都子。
沙都子さんからだ。


「はい、もしもしー」


電話の向こうから可愛い女の子の声が聞こえる。


『きぬちゃんですか?』


「その声はさやちゃんですか?」


私は一気に嬉しくなって、悪戯するような声で問う。
向こうでクスクス笑う声。沙都子さんの娘の清子(さやこ)ちゃんだ。
すぐに大人の女性の声に替わった。


『絹さん、ごめんなさいね。お休みのところ』


「いーんです。だらっとしてましたから」


『またドラマ見てたんでしょう。朝からずっと』


図星だ。
沙都子さんは社内で唯一、私が超インドアで男日照りで処女だって知っている。
なぜか、随分前に見破られてしまったのだ。


『今、清子と武蔵境の駅前に用事があっているんだけどね。よければ、お夕飯ご一緒しない?』


「え、行きます。すぐ行きます」


グッドタイミング。
今日は朝イチで福神漬け山盛りレトルトカレーを食べただけだ。
ただいまお腹が空ききっているであります。
< 58 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop