強引社長の不器用な溺愛
私はテレビの電源を落とし、ベースを顔にぎゅーっとのばし、眉だけ描いた。
髪の毛はちゃちゃーっとおだんごにして、服はジーンズにトレーナー。そして、ユニクロのダウン。
完全なご近所スタイルでマンションを飛び出した。

ゆっくりでいいと言うので、いつもの道をスニーカーで黙々と歩く。
駅前のロータリーはタクシーやバスで込み合っている。
薄暗くなる時間帯、大きなスーパーは煌々と灯りを発し、その前に沙都子さんと清子ちゃんがいた。


「きぬちゃーん」


4つになる清子ちゃんは私を見つけるとぴょんぴょんと跳ねた。
私は可愛い出迎えが嬉しく小走りになる。


「きぬちゃん見て!ぷりきゅあのパンツ買ったよ」


清子ちゃんはがさがさとスーパーのロゴ入り紙袋から、今日の戦利品を取り出して見せてくれる。
うんうん、奇遇だねぇ。
お姉ちゃんもこのスーパーでよく買うよ、パンツ。


「こら、清子。その前に『こんばんは』でしょ。絹さん、急にごめんなさいね。買い物ついでに呼び出しちゃって」


「いいんです。知っての通り、呼び出してくれる人がいなければ、ずーっとドラマ見てますから」


「枯れてるわ。心配になってきた」


沙都子さんが真面目な顔をする。
なんか、瞳の本気度が高くていたたまれない。


「ごはん、行きましょ!ね?さやちゃん、何食べたい?」


「ラーメン!」


「だめ、この前も食べた」


沙都子さんが厳しくストップをかけ、結局駅徒歩5分の洋食屋に決定。
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