強引社長の不器用な溺愛

すると、オフィスのドアが内向きに開いた。
まだ始業まで1時間半ある。

誰だ、こんなに早く来るやつ！
完全に自分のことを棚に上げて、社長のデスクから大きく離れて振り向いた。


「篠井、早いな」


そこには八束社長本人がいた。


「おはようございます。社長こそ早いですね」


私は内心のドキドキを押し隠して言った。
社長は私の様子はどうでもいいみたい。あくびをしつつ、フロアに入ってくる。


「俺はジムが臨時休館日だったんだよ。家に帰るのもなんだから、そのまま出勤してみた」


社長は、週2日か3日、朝にジムでトレーニングをしてから出社する。
背が高く、骨格もがっちりしているこの人。スーツを着るからという理由で、筋肉は大きくせず、引き締めるトレー二ングをしているとか。

そのせいか、社長の身体はボディビルダーやプロレスラーというより、格闘家やダンサーのそれに近い。
見たことないけど、腹筋くらいは割れてそうだ。
ラーメンとかお菓子とか、不摂生を止めたら、もっと締まるんだろうけど。


「篠井、朝メシ食った？」


「えーと、ヨーグルトとシリアルを」


本当は昨夜の残りの牛丼（これは私の手作りだ）を朝から掻き込んできたんだけど、イメージ崩れるから言わない。

美女の朝食っぽいじゃん。
グリーンスムージーとか、フルーツとかさ！