キッチン【短編】
とは言え………


ずっと親元暮らしだった私。


就職をきっかけに初めて一人暮らしを始めたのは今年の春の事。


それまでは家に帰ればご飯は当然の様に用意されていて、そして朝、起きると朝ごはんがスッと出てくる。


そんな私が作れるものと言ったら………


限られている。


取り敢えず、冷蔵庫を開けてみる。


男の人の一人暮らしなのに、空っぽかと思っていた冷蔵庫には、そこそこ食材が入っていた。


しかも調味料の種類も揃ってる。


私の部屋の冷蔵庫より確実に充実しているかも。


私以外の誰かが来て作ってる?


他にも女の人がーーー


まさか、そんな事ある訳ない。


自分に言い聞かせつつ、取り敢えず、私でも調理出来そうな卵とソーセージと後、野菜を少し取り出した。


えっと、フライパンはと……


シンク下辺りの扉を順に開けていくとフライパンがあった。


フライパンを熱して目玉焼きを作ろうとしたら上手く卵が割れなくて黄身の部分が崩れてしまった。


なので急遽、ぐちゃぐちゃに混ぜてスクランブルエッグに変更。


けれどボウルに入れてちゃんと混ぜてないので綺麗に混ざりきらない。


所々、白身のまま固まってたり……。


スクランブルエッグと言うより……ただのぐちゃぐちゃ卵の出来上がり。


「ケチャップ掛けて食べちゃえば一緒だよね。」


言い聞かせながら次はソーセージを焼く。


止めておけばいいのに、ちょっとでも褒めて貰いたくてタコさんウィンナーに挑戦するも敢え無く撃沈。


足の部分が上手く切れなくてタコさんならぬ、鯉のぼりの一番上でなびいてるアレみたいになった。


たったの二品作った段階でかなり時間が掛かった気がする。


案の定、リビングから高嶋さんの声がする。


「大丈夫?手伝おうか?」


「だ、大丈夫です。間もなく完成です。」


さぁ、後はサラダだよね……。




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