キッチン【短編】
「この部屋にミチル以外の女が来たのは姉貴以外無いよ。」


「えっ?お姉さん?」


「そっ。俺も多少は作れるんだけど、今は仕事が忙しくて不規則な生活してるから心配性のうちの母親に言われて姉貴が時々作りに来てるんだ。結婚してこの近くに住んでるからね。」


そうなんだ……。


だから、こんなにも調理器具が充実してたり、食材もあったり……。


「だけど、断らなきゃな。」


「えっ、何でですか?」


「なんでって……、これからは彼女に作ってもらうから?」


「わ、私?いやっ、そ、そんな作れないです。ほら、みてください。これですよ。こんなのですよ。」


どう見ても美味しそうとは言えないものがそこにある。


「ミチルは俺の事を思ってこれを作ってくれたんだろ?」


確かに高嶋さんに食べてもらいたいって思って作ったけど……首を縦に一つ振りながらも申し訳ない気持ちになる。


「俺はミチルのその気持ちが嬉しい。それにこうして朝ごはんを一緒に食べる事が出来て更に嬉しい。」


「高嶋さん……。」


目の前で優しく微笑む高嶋さんに胸がキュンとなる。


「俺、これまで付き合ってもあまり自分からのめり込むとか無かったから。だから自分ちにも連れてきたりとか無かったんだ。後々、面倒な事になったら嫌だなって。ってこんな事言う俺に引くだろ?」


苦笑いする高嶋さんに全力で否定する。


「そ、そんな事ないっ。私が初めてで……良かったです……。」


「そっ?俺もミチルのハジメテになれて嬉しいよ。」


「っ!な、何言ってるんですか。」


「顔、真っ赤。ミチル可愛いな。」


「ほんと、やめてください……。」


「ダメだ。ミチルが可愛くてつい意地悪したくなる。そのうち俺、引かれるかも。さっ、サラダ仕上げて食べよう。」


私の額に軽く口付けると漸く高嶋さんから解放された。



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