何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「盗聴器……?」

「ご名答」



私の震える声が路地裏へと消えていく。


もちろん、私の許可なくつけられていた。
ひと言でも言ってくれていればこんなに動揺しなくても済んだかもしれない。
でも、何も言われていない。


それだけなのに胸が凄く痛くなる。


信じて貰えていない、そう思ってしまう。


遥斗はそんな人じゃない。
たぶん、いや、絶対に証拠を残す為に私につけたものだ。


だとしても……。



「酷いよ」

「梓沙……?」



私の声が小さすぎて誰にも届く事はなかった。

でも、上手く笑うことが出来ずに下を俯いてしまう。
こんな顔を見られたくない。



「……お前に黙って盗聴器を付けた事は悪かった。
でも、事前に言ってたらお前は普通に出来たか?
相手へと罪の意識を感じちまうんじゃねぇかって思って言えなかったんだ」



何もかも見透かしたように遥斗は私の頭を撫でた。

優しくて、温かくて、涙が零れそうになる。


遥斗は色々な事を考えて私に言わなかったんだ。
そう思うと勝手に落ち込んでいた自分が馬鹿みたいに思える。


それに遥斗を信じられなかった自分が嫌になる。



「梓沙、悪かったな。
お前に嫌な想いをさせちまって」

「……私こそごめんね。
変な誤解をしちゃって……」

「誤解?」

「……えーっと……私……遥斗に信じられてないのかなって思っちゃって……」



俯きながらもちゃんと伝えれば、上から呆れた様なタメ息が降ってきた。
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