何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
操り人形
タイピング音が響き渡るオフィスで仕事をしていた時だった。
机に置いていたスマホが小刻みに震えだす。


パソコンから手を離し、スマホを見ながらホッと一息つく。
最近、忙しかったから少し疲れたな。
軽く伸びをしながらもスマホに目を向ける。


そこにはレイヤからのメールが表示されている。



“この前の依頼の迷い猫が見つかった。
お前も心配してたから報告しておく。”



「見つかったんだ……良かった……」



安堵でタメ息が漏れる。
スマホを机に戻し仕事を再開する。


でも、私の頭の中は何でも屋の事でいっぱいだった。


ヨウコさんの依頼が終了してから、私は何でも屋の依頼を沢山手伝ってきた。


内容は、迷子の猫探しや、落し物の捜索など。
偽装恋人の必要がない依頼ばかりだ。


それなのに何故、遥斗は私に偽装恋人を頼んだのだろうか?
考えても分からないし、本当は……。
そんな事どうでも良くなっている気がする。


何でも屋で様々な依頼をこなすうちに……。
沢山の人と関わってきた。
若い人からお年寄りまで、幅広く。


でも、どんな人でも依頼が解決すれば
満面な笑みで“ありがとう”と言ってくれる。


それがすごく嬉しくて、心地が良かった。


それに、遥斗やレイヤと一緒にいる時間が凄く楽しくて……。
ずっと一緒にいれたらいいのに、と思う様になった。


あそこにいると、私が私らしくいられる。
そんな気がするんだ。
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