何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「す……すみません!」



反射的に謝罪の言葉が出てくる。
でも良く考えれば私が謝る必要はない。


そう思った時、低い声が私に向けられた。



「……つけ上がるなよ、小娘……。
貴様、私が誰だか分かっているのか?」

「……知らないです……」

「私はな……」

「貴方は何をしているのですか」



男の人が口を開く前に女の人の声が響き渡った。
それは私が良く知っている人の声だった。



「お……お義母様……」



何の感情も籠っていない冷たい瞳をするお義母様は私を見据えながらタメ息をついていた。



「貴方は自分の立場が分かっていないようですね」

「私は……」

「黙りなさい。
この方は柊家と深く関わりのある方です。
大事な取引先の社長さんに貴方は何をしているのですか」



取引先の社長。
その言葉にピクリと肩が揺れる。


それは社長の頬を叩いた事への恐怖ではなかった。
社長だから一体なんだと言うのだ。
この人は私にセクハラをしたのだ。
社長かどうかなんて関係ない。
そんな当たり前な事なのに、この世界ではそれすら捻じ曲げられてしまう。


立場が上の人ほど優遇され、間違っている事さえ正当化される。
今までの私なら流されていたかもしれない。
でも……そんなの間違っている。


だから……。



「この方はセクハラを働いたのです。
社長だからなんですか?
悪い事をして謝らなくていい人なんていません」



お義母様と社長さんを真っ直ぐに見据え強く言い放った。
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