何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「梓沙」

「はい?」



いきなり呼ばれた私はビックリしながらも顔を上に向ける。
目に映ったのはいつもの冷たい顔をした拓哉さんでも柔らかい笑みを浮かべる拓哉さんでもなかった。


寂しそうに、悲しそうに私を見つめている。
この顔……昨日もしてたよね……?


確か……私がキスを嫌がった時だ。
五十嵐さんの事を好きだと誤解していた時の拓哉さんの顔と同じ表情だ……。
何でこんな顔をしているのだろうか……。
黙って見つめていれば拓哉さんの唇がゆっくりと動いた。



「俺はそんなに冷たい人間か?」

「え……?」



拓哉さんから出た言葉は、今まで聞いた事も無いくらい弱々しいものだった。
その声にズキッと胸が痛む。
あまりの衝撃に言葉が出ない。



「会社の人間も、俺の周りの人間も……。
全員がそう思っている事は知っている。
冷血、非情、心がない……影でそう言われている」

「拓哉さん……」

「だが、俺は自分のやり方が間違っているとは思わない。
生温い経営をすればいつか必ずつけが回ってくる。
だからこそ……厳しく社員たちにも接している」



初めて聞く拓哉さんの弱音。
私は何も言えずただ彼の胸の中でジッと話を聞いていた。



「誰に嫌われようが、憎まれようがそんなの関係ない。
俺は会社を守るだけだ……そう思って必死にやって来た。
だが……最近になって思うんだ」



拓哉さんは私を抱きしめていた手をゆっくりと頬へと移動させる。
ゆっくりと頬をなでおろし今度は私の唇を優しく撫でる。
行動の意図が分からず戸惑う私に拓哉さんは目を細めた。
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