何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「これは失敬!
如月さんの美しさに我慢が出来なくなってしまってね。
……じゃあ私は失礼させてもらうよ」



龍崎さんは最後にもう1度だけ私の胸元に目を向けて私たちの前から去っていった。

龍崎さんがいなくなった事で私と拓哉さんは必然的に2人きりになってしまう。
周りには何百人ものパーティーの参加者がいる。
騒がしいはずの空間がやけに静かに感じた。



「梓沙」



腰に回る拓哉さんの手に力が籠められたのが分かった。
鈍い痛みが広がり、私の顔には悲痛の表情が浮かぶ。
そんな私にお構いなしに拓哉さんは低い声で言葉を落とす。



「たとえ嘘でも、あのエロ親父を素敵だなんて言うな」

「……ごめんなさい……」



拓哉さんの手が私の体の向きを変えて真正面に向ける。
そして私を見下ろす様に睨みつけると勢いよく引き寄せた。


抱きしめられている。
そう理解するのは難しくはなかった。


でもこれは純粋な愛情からの行動なんかではない。



「お前は……俺だけものだ。
俺以外を……見るな……」



それを裏付ける様に狂気に満ちた言葉と愛情が私に降り注がれる。


完璧な人間はこの世にはいない。
どんなに素晴らしい外見があったって、誰もが羨む家柄に生まれたって……。


誰にでも欠点はある。
彼の場合は……異常な愛情の持ち主だって事……。
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