男の秘密
「ここは?」

「私の家です。貴方、昨日空き地で具合を悪くしてたんです。それで病院を勧めたんですが、行きたくないって。でも、そのままには出来ないし、貴方の家も分からないので、それで私の家に連れて来ました」

花が開いたようにニッコリと笑ってそういう女性はとても可愛らしい。

ゆるくウェーブのかかった栗色の髪が肩より少し長い辺りで切りそろえられている。
目が大きめで黒より少し茶色がかった瞳は生き生きとしている。
化粧をしていないようだが、そのままでもとても可愛い。
華奢な女性らしい身体に室内なのにコートを着ている。

忍が口を開かないので、少し困ったように優は自己紹介をする。

「あ、自己紹介がまだでしたね。私は斉藤優(さいとうゆう)です」

忍は少し考えるような素振りをみせてから名乗った。

「斎賀忍(さいがしのぶ)です」

「斎賀さんですね。素敵な名前ですね。」

自己紹介をして貰って明らかにホッとしている優。

少し不安げに優を見ていた忍だが、優の変わらぬ態度にこちらもホッとしているようだ。

「え・と。斎賀さんは何か食べられそうですか?今から買い物に行くので食べられそうなものがあったら言って下さい」

そういって立ち上がった優は買出しの用意を始める。

忍は驚いた顔をした。

「まだ、食欲が無いですか? おかゆなら食べられますか?」

何時までも黙っている忍に不安を覚えた優がそう聞いてきた。

「え、あ、あぁ。食欲があまりないんだ。」

擦れた声でそう言う。
熱があまり下がっていないようで身体がダルく食欲が出ない。

「何か食べてから飲む方がいいとは思いますが、先に薬を飲みますか?」

そう言って立ち上がり、キッチンから戻って来た優は、お盆の上に水と薬を乗せていた。

「解熱剤があったんでどうぞ・・え・・と今本当に何も無くて・・・ゼリーなんかがあれば食べられましたよね。」

叱られた子犬のようにしょげている優を見て、忍が口元が綻んだ。

「ありがとう、俺の家だと薬が無いから助かったよ」

そう言って優から渡された薬を飲む。
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