男の秘密
仕事が終わって自宅に戻らず、そのまま忍の家に向かう。

昼間のメールで７時頃に帰るので、家で待っていて欲しいと書いてあった。

嬉しくて直ぐに返信していた。

冷蔵庫の料理を思い出し、それにプラスするおかずを決めて、スーパーで買ってきた。

『やだ、もう７時になってしまう』

時計を見て慌てる。

思った以上に買い物に時間を使ってしまったようだ。

『誰かの為に料理をするのって、楽しいわ』

胡麻和えの味見をしながらそんな事を考えていると、玄関のドアが開く音がした。

「ただいま。あぁ、いい匂いだ」

忍が優の姿を捉えてふわりと笑う。

「お帰りなさい。もう少しで出来るので、ソファーにかけて待っていて下さい」

忍はリビングを出て行き、暫くして部屋着に着替えてきたが、優の傍までやって来た。

「こんな風に、家に帰ったら料理を作って待っててくれる人が居るっていいな」

近くで忍の低く落ち着いた心地いい声を聞くだけで、ドキドキしてくる。

「あ、あの、落ち着かないので、ソファーにかけていて下さい」

顔を真っ赤にして、慌てる優を楽しげに見ている忍だったが、これ以上ココにいると優の機嫌を損ねると判断して大人しくその場を離れた。

忍が居なくなると寂しい気持ちがするが、その分作業が捗った。

炊飯器が無いので、今回はスーパーで白ご飯を購入して間に合わせた。

「ローテーブルでだと食べにくいね」

「私はローテーブルでの食事に慣れてるんで大丈夫ですよ」

他愛無い会話をしながらの夕食は楽しかった。
< 137 / 246 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop