男の秘密
忍が風呂から上がると美味しそうな匂いが広がっていた。

「お風呂ありがとう。さっぱりしたよ」

その声に初めて忍の存在に気付きビックリした顔で振り帰った。


「お、お風呂熱くなかったですか？」

風呂上りの濡れた髪や、上気した顔を見て、やっと平静に戻った筈の優の心臓はドキドキと早くなる。

「丁度良かったよ」
ゆったりとした動きで近づいてくる忍に、動揺を隠せず慌てる優。

「の、のどか沸いてないですか？　あの、お茶とお水がありますけど」
顔をまともに見られなくて視線を逸らしながら尋ねる。顔の火照りは全く収まらない。

「じゃぁお茶頂戴」
低く艶のある良く通る声が間近で聞こえて、優の心拍数が更に上がる。

『もう、どうしたら落ち着くのか分からないわ』

物凄い勢いで冷蔵庫からお茶を出して、押し付けるように忍に渡し、そのまま背を向けた。
その態度に忍は嫌な思いをしていないだろうか・・・。
不安になりそっと忍の表情を伺おうとした。

「！！」

喉が乾いていたらしく、ゴクゴクと喉仏を上下させながらお茶を飲むその姿に釘付けになった。

暫く目が離せずその姿を見ていたが、もうすぐお茶を飲みきる事に気付き慌てた。

『じっと見てたら、また変な人って思われちゃう！』

慌てて顔を背けて深呼吸を行う。

『落ち着け！　落ち着くのよ』

呪文のように繰り返す。

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