男の秘密
悲痛な面持ちで黙り込んだ時、検査室の扉が開き、優が出てきた。

「検査で異常は見られませんでしたが、今日は大事をとって入院してください」

看護師の言葉に頷き、優の顔をみるが、目を覚ました様子は無い。

二人は一旦、優と一緒に病室に行ったが、忍は入院の手続きを行いに、羽奈は警察に行った。

「すまない。君も優が心配だろう」

「良いんです。警察で事情を説明したら、また寄ます」



ヒラリと手を振って、病院を後にする羽奈を見送り、病室に戻ると優が目を覚ましていた。

「優!」

忍が駆け寄ると、ぼんやりとした表情で忍の方を見た。

「忍・・さ・ん?」

「気がついてよかった。何があったか覚えているか?」

傍の椅子に腰掛けて、ゆっくりと話す忍に、優も記憶を辿っていく。

「忍さんから電話があって・・そうしたら・・・!?」

「落ち着いて。もう大丈夫だ。男は警察に捕まったし、羽奈さんがストーカー行為の説明に行っている」

状況を思い出して慌てた優の手を握り安心させる。

「羽奈が?」

「羽奈さんが謝ってた。昨日ストーカー行為を追及したから、それで逆上したのかもしれないって
優は、ストーカーの顔を見た?」

「はっきりとは見ていないけど、声が松永主任に似てたような・・・」

「そうか・・怖い思いをしたな」

「ううん。いきなり引き倒されて、意識が朦朧としてる時に何か言われたから、殆ど覚えていないの。
でも、忍さんが助けに来てくれたのは覚えているわ」

「怖い思いは覚えていない方がいい。」
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