男の秘密
『待たせると悪いわね』

室内に入ると急いで髪を整え化粧を直し、最後に紙袋を手に取る。

羽奈に作った豆乳かりんとう。

忍にと多目に作ってあった。

シリカゲルが入っているし、シーラーで密封してあるから湿ってはいない筈。

そんな事を考えながら足早に車に戻る。

「お待たせしました」

洋楽が響く車内に滑り込むように乗り込む。

「いや、こっちこそ早く来てゴメン」

「気にしないで下さい。私の仕事が長引いてしまった所為なので」

「仕事、忙しいの?」

「総務なので、月末は忙しいんです」

そんな会話をしながら、車は静に走り出した。

とても滑らかな走りにBGMの洋楽が心地いい。

忍とはメールのやり取りをしていたお陰か、思ったより緊張せずに話せた。

車を走らせると、少しずつ街中から外れていく。

車に乗らない優は、何処に向かっているのか全く分からなかったが、特に不安も無かった。

時折、対向車に照らし出される忍の横顔を見つめる優。

今日の忍は黒渕の眼鏡をかけ、長めの前髪を横に流している為、目は見えなかった。

あまりマジマジと見る機会が無いが、とても整った容姿は優の知る限り忍だけだ。

加藤の精悍な顔つきは、ガッシリした体育会系のイケメンらしい。

松永はインテリ系のイケメンだと社内では言われている。

忍はそのどちらでも無い。
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